Travis Scottの感想、ライブレポート(2025年 ベルーナドーム)

2025年11月8日、埼玉・ベルーナドーム(西武ドーム)で開催されたトラヴィス・スコット(Travis Scott)の来日公演「CIRCUS MAXIMUS WORLD TOUR」は、日本のヒップホップ史を塗り替える「伝説の一夜」となりました。
2025年末の現在、今年最高の興行収入と熱狂を記録したライブとして語り継がれているこの日の詳細をレポートします。

Travis Scott

この日は、前に用事があったため前座のDJタイムは見れずトラヴィスからのダイレクトな参加でした。
西武球場前駅に着き、そこで駅前のトイレに入るとトイレの上にはポイ捨ての飲み物の山。やはり、ヒップホップヘッズは治安やモラルが終わってるなぁと思いながらベルーナドームへ。
最新アルバム『UTOPIA』の世界観を巨大なスケールで再現したこの公演は、単なる音楽ライブを超え、一種の「宗教的体験」とも言える熱量に包まれました。
開演予定を大幅に過ぎ、会場がイライラと異様な緊張感に包まれる中、地響きのような重低音と共にトラヴィスが登場。1曲目のHYAENAが流れた瞬間、観客の熱狂は一気に爆発しました。
ステージには巨大な岩山やモノリスを思わせるセットが組まれ、炎とレーザーが絶えず交錯しており、見ているこちらはトランス状態に。トラヴィスがステージ上を獣のように飛び回る姿に、数万人の観客がシンクロして飛び跳ねたりシンがロングしながら叫ぶ光景は圧巻でした。
他にもライブも様々なファンサがあり、THANK GODの演奏中、トラヴィスの愛娘ストーミちゃんがステージに現れ、親子でパフォーマンスする微笑ましくも力強いシーンに会場中が盛り上がりました。
また、トラヴィスがステージ近くの人をステージ上に上げ一緒にsdp interludeを歌ったりもしてくれました。
アホみたいにずっと盛り上がっていたかというと、MY EYESのように、しんみりと内省的でテクニカルなラップで会場の目をくぎ付けにもしました。
中盤の締めのMamacita、I KNOW ?、90210では火柱のパイロもふんだんにあがり観客のボルテージはまさに爆発連発。
そしてここからが、本日の最大のハイライトですが、Runawayのイントロと共に黒いマスクをかぶったカニエ・ウェスト(Ye)がなんとサプライズ登場しました。カニエウエストの久しぶりの日本でのライブに、ヒップホップヘッズは地鳴りのような歓声がドームを揺らしました。二人はCan’t Tell Me Nothingをパフォーマンス。その後、Yeがマスクをとると、おそらくこの日一番の盛り上がりを。
マスクをとった後も、Father Stretch My Hands, Pt. 1、Stronger、Through The Wireなど、ヒップホップ界のアンセムを連発。東京・埼玉所沢の夜が完全に世界の中心となった瞬間でした。
さて、カニエウエストが退場した後も、ライブは終わりません、トラヴィス・スコットのライブのクライマックス、FE!Nの無限ループです、曲のサビを何度も連続で繰り返す、トラヴィスお決まりの「FE!Nループ」を披露。本公演では4回繰り返されましたが、観客は体力の限界を超えて暴れ回り、ドーム全体が巨大なモッシュピットと化しました。
公演によっては10回を超えたりするらしく面白いですね。
そこから、ラストに向けて、SICKO MODEとGoosebumpsという誰もが知る代表曲を畳み掛け、会場のボルテージは測定不能なレベルにまで達しました。
最後の曲はTELEKINESIS、SZAとTravis Scottの声がドームの中を反響しながら、徐々に収まっていくのがライブの終わりを静かに告げ、余韻が心の中へとハウリングしていきました。
ここ10年、サマソニやフジロックでケンドリック・ラマーやポスト・マローン、チャンスザラッパー、N・E・R・Dといったヒップホップアーティストが日本のヒップホップシーンにいろいろと切り込んでくれましたが、それがいよいよ結実した1日だったと感じました。
文字通り規格外のイベントでまさにユートピアな時間でした。