TOOLのおすすめ人気曲、代表曲、アルバム

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プログレッシブ・ヘビー・メタル界の帝王TOOL(トゥール)。
そんな彼らの曲を紹介したいと思います。

TOOLとは?

1990年、ロサンゼルスでバンドは結成されました。ボーカルのメイナード・ジェームス・キーナンとギタリストのアダム・ジョーンズを中心に出会い、ドラムのダニー・ケアリー、初代ベーシストのポール・ダムールが加わります。
1992年のEP『Opiate』、そして1993年の1stアルバム『Undertow』で、彼らは当時のグランジ/オルタナティヴ・シーンに衝撃を与えました。この時期の彼らは、剥き出しの怒りや社会への不信感を、ヘヴィなリフと不穏なリズムで表現していました。「Sober」のミュージックビデオで見せた不気味なストップモーション・アニメーションは、アダム・ジョーンズの視覚芸術家としての才能を世に知らしめ、バンドが単なる音楽集団ではないことを予感させました。
1995年、ジャスティン・チャンセラーが新ベーシストとして加入したことで、バンドの音楽性はより複雑でプログレッシブな方向へと舵を切ります。
1996年に発表された2ndアルバム『Ænima(アニマ)』は、カール・ユングの心理学や精神分析的なテーマを内包した傑作となりました。楽曲は長尺化し、複雑な変拍子が導入され、メイナードの歌詞は自己の内面を深く掘り下げるものへと変化しました。このアルバムで彼らは初めてグラミー賞を受賞し、ヘヴィ・ミュージック界における「孤高の哲学者」としての地位を確立します。
2001年、TOOLはロックの歴史に残る金字塔3rdアルバム『Lateralus』をリリースします。フィボナッチ数列を楽曲構成に取り入れたタイトル曲に象徴されるように、数学的な緻密さと、アレックス・グレイのアートワークによる神聖幾何学的な世界観が融合。音楽を「瞑想」や「精神的覚醒」の域まで高めました。
2006年の4thアルバム『10,000 Days』では、メイナードの亡き母に捧げた極めてパーソナルなテーマを、より重厚で円熟したサウンドで描き出しました。この時期、ライブパフォーマンスはさらに進化し、レーザーと巨大映像を駆使した「没入型体験」へと変貌を遂げました。
ここからバンドは、13年というあまりにも長い沈黙期間に入ります。メンバー間の完璧主義的な制作プロセスに加え、複雑な法的トラブル、さらにはメイナードの別プロジェクト(A Perfect Circle, Puscifer)やワイン造りなど、個々の活動が優先されました。しかし、この空白こそがTOOLの神秘性をさらに高め、ファンの飢餓感は世界的な「信仰」へと昇華していきました。
2019年、ついに13年ぶりの5thアルバム『Fear Inoculum』をリリース。同時に彼らはそれまで頑なに拒んでいたデジタル配信を解禁し、全米チャートのトップを独占しました。本作は、加齢や衰えに対する「免疫」をテーマに、一曲が10分を超える大作主義を極めた内容となりました。パンデミックによるツアーの中断を乗り越え、彼らは再び世界中のアリーナを、音の波動で浄化する儀式の場へと変えていきました。
今までもTOOLは一度もその芸術的クオリティを落とすことなく君臨しています。近年のツアーでは、ダニー・ケアリーの超人的なドラミング、ジャスティンとアダムによる鉄壁のアンサンブル、そして影の中から響くメイナードの神秘的な歌声が、最新のテクノロジーと融合し、もはや「ロック・コンサート」の概念を逸脱した宇宙的な体験を提供して、世界中のファンは、その静かな鼓動を待ち続けています。

TOOLのおすすめ人気曲、代表曲、アルバム

Opiate (収録アルバム:Opiate)

TOOL – Opiate (Audio)

初期の攻撃性とアンダーグラウンドな雰囲気が色濃く残る楽曲。「宗教は大衆のアヘンである」というテーマを皮肉たっぷりに歌い上げています。メイナードの若々しくも鋭いボーカルと、まだ荒削りながらも重厚なグルーヴが、後の怪物バンドへの片鱗を覗かせています。

Sober (収録アルバム:Undertow)

TOOL – Sober (Official Video)

Toolを世に知らしめた、ダークで重苦しいアンセム。アダム・ジョーンズによる不穏なギターリフと、這いずり回るようなベースラインが、中毒と自己嫌悪の苦しみを表現しています。サビでのメイナードの絶叫は、いつ聴いても鳥肌が立つほどの迫力があります。

Prison Sex (収録アルバム:Undertow)

TOOL – Prison Sex (Official Video)

虐待の連鎖という重いテーマを扱いながらも、変拍子を交えたグルーヴィーなリズムが奇妙な中毒性を生んでいます。不気味さとキャッチーさが同居する、初期Toolの真骨頂。ミュージックビデオのストップモーション・アニメーションもトラウマ級のインパクトを残しました。

Stinkfist (収録アルバム:Ænima)

TOOL – Stinkfist

感覚の麻痺と、より強い刺激を求める現代病をメタファーにした楽曲。インダストリアルなノイズと重厚なリフが絡み合い、聴き手を徐々に深淵へと引きずり込みます。決して速い曲ではないのに、圧倒的なドライブ感と推進力を持った傑作です。

Forty Six & 2 (収録アルバム:Ænima)

TOOL – Forty Six & 2 (Audio)

ユング心理学や進化論をテーマにした、知的でミステリアスな一曲。ダニー・ケアリーのドラミングが際立っており、特に後半のドラムソロからクライマックスへ向かう展開は圧巻です。「影(シャドウ)」との対峙を描いた歌詞は、多くのファンの考察対象となりました。

Ænema (収録アルバム:Ænima)

TOOL – Ænema (Audio)

「ロサンゼルスなんて海に沈んでしまえばいい」と歌う、破滅的でカタルシスに満ちた楽曲。ビル・ヒックスのコメディに影響を受けた皮肉な歌詞と、複雑な拍子記号を自然に聴かせる演奏技術が見事に融合しています。グラミー賞を受賞し、彼らの代表曲の一つとなりました。

Third Eye (収録アルバム:Ænima)

TOOL – Third Eye (Audio)

アルバムの最後を飾る、13分を超える大作。サイケデリックで混沌としたサウンドスケープが展開され、意識の拡張や精神世界への没入を音で体現しています。ライブではオープニングで演奏されることも多く、観客を一気に異世界へと連れ去る力を持っています。

The Grudge (収録アルバム:Lateralus)

TOOL – The Grudge (Audio)

アルバム『Lateralus』の幕開けを告げる、緊張感あふれるナンバー。古代の碑文や錬金術的なテーマを含みつつ、過去の怒りや執着を手放すことを叫んでいます。曲の終盤にある、メイナードの約25秒にも及ぶロングトーン・スクリームは、ロック史に残る名演です。

Schism (収録アルバム:Lateralus)

TOOL – Schism (Official Video)

ベースのリフがあまりにも有名な、変拍子の教科書のような曲。頻繁に拍子が変わる複雑な構成ながら、歌メロは驚くほど美しくメランコリックです。「コミュニケーションの断絶」をテーマにしており、パズルのピースがハマるような独特の快感が味わえます。

Lateralus (収録アルバム:Lateralus)

TOOL – Lateralus (Audio)

フィボナッチ数列を歌詞の音節やリズム構造に取り入れた、数学的かつ哲学的な傑作。螺旋(スパイラル)を描くように高揚していく曲展開は、生命の神秘や宇宙の真理を感じさせます。「Spiral out, keep going」というフレーズは、バンドの哲学そのものです。

Vicarious (収録アルバム:10,000 Days)

TOOL – Vicarious (Official Video)

他人の不幸や悲劇をテレビ越しに見て楽しむ、人間の覗き見趣味的な本性を暴いた曲。高速なリフと畳み掛けるようなボーカルが攻撃的ですが、プロダクションは非常にクリアで洗練されています。現代社会の闇を鋭く切り取った、強力なオープニング・トラックです。

The Pot (収録アルバム:10,000 Days)

TOOL – The Pot (Audio)

偽善やダブルスタンダードを批判する楽曲で、Toolにしては珍しくグルーヴ重視のストレートな乗りやすさがあります。メイナードが高音域の歌声のみで押し通すスタイルが新鮮で、ベースラインのうねりが強烈なファンクネスを生み出しています。

Rosetta Stoned (収録アルバム:10,000 Days)

TOOL – Rosetta Stoned (Audio)

「エリア51の近くで宇宙人に会った」という狂気じみた独白が続く、カオスでユーモラスな大曲。高速でまくし立てるボーカルと、ポリリズムが複雑に絡み合う楽器隊の演奏は、聴く者を圧倒的な情報量でねじ伏せます。バンドの超絶技巧が最も堪能できる曲の一つです。

Jambi (収録アルバム:10,000 Days)

TOOL – Jambi (Audio)

アダム・ジョーンズが「トーク・ボックス」を使用した、まるでギターが喋っているような独特のソロが強烈なインパクトを残す楽曲。Meshuggah(メシュガー)の影響を感じさせる重戦車のような三連符のリズムが、聴き手の身体を芯から揺さぶります。王のような富や地位を捨ててでも、たった一つの愛する存在を守り抜くという決意が歌われており、ヘヴィなサウンドの中に深い哀愁と人間味が感じられる人気曲です。

Fear Inoculum (収録アルバム:Fear Inoculum)

TOOL – Fear Inoculum (Audio)

13年ぶりの新作のタイトル曲として、ファンの渇望を癒やした長尺曲。「恐怖へのワクチン」というタイトルの通り、不穏な空気を浄化していくような儀式的な響きがあります。熟成されたワインのように、派手さは抑えつつも深みと繊細さが増した、大人のプログレッシブ・メタルです。

Pneuma (収録アルバム:Fear Inoculum)

TOOL – Pneuma (Audio)

「精神」や「呼吸」を意味するタイトル通り、瞑想的でスピリチュアルな楽曲。シンセサイザーの使い方が効果的で、中盤のインストゥルメンタル・パートではバンドが一体となって宇宙的な空間を作り出しています。ダニー・ケアリーのドラムプレイが神懸かっており、ライブ映像も大きな話題となりました。

まとめ

個人的にまず聞いてほしい曲。アルバム

  1. The Pot
  2. Ænema
  3. The Grudge

おわりに

いかがだったでしょうか。
TOOLの難解な世界は人類が到達しうる芸術の最高到達点の一つとして、怪しげな光を感じられますね。
ぜひ聞いてみてください。

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